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遊び道具をナイフで工作した昭和半ばの子どもたち

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僕が小学生だったある数年の冬、小さな折りたたみナイフが大流行したことがありました。それで竹やりや竹鉄砲、木刀などを作るのです。

たとえば竹やりは川のそばに自生している細く真直ぐ伸びた女竹を使います。

のこぎりで長さ1メートルほどに切り、片方をナイフで斜めに尖らせます。そしてもう片方には尻から縦に5センチほど割れ目を付けます。

細長いアオキの葉を採り、先端にナイフでジェット戦闘機の尾翼のような矢形の切り込みを入れます。これをさきほどの竹の割れ目に差し、最後に“尾翼”が抜け落ちないように尻を糸で縛り完成です

アオキはこの地方では冬に鮮やかな赤い実をつける低木の常緑樹でよく庭木として植えられています。鳥が実を食べフンを落とすのか、辺りの雑木林でもよく見られ、子どもでもかんたんに手に入る材料でした。

冬の田んぼは平たんで格好の遊び場でしたが、いかんせん野球のボールやバットを買うお金がない。サッカーというスポーツはまだ知りませんでした。そのためこのような原始的な遊び道具を自らこしらえ興じていました。

だいたいこのような遊びは一人でやってもおもしろくありません。友だちとどこまで飛ばせるか競うところに妙味があります。

少し向かい風がある日などは30~40メートルほどは飛ばせたと思います。田んぼなので着地もズブッと刺さって小気味よい。投げては回収し、また投げては回収を2往復もすれば汗がにじむほど体が温まります。

一方、竹鉄砲は細い筒と押し出す軸を切り出し、綿とぼろ布を軸の先端に巻き太らせます。筒の先にさきほどのアオキの赤い実を詰め、反対側から水で湿らせた軸を押しこむと、空気圧で実がポンと音を立てて飛び出す仕組みです。

この工作は筒の直径にぴったり合わせる軸の細工が高度で、だいたい年かさの兄ちゃんたちに作ってもらっていました。

木刀はこれも雑木林によく自生している広葉樹の幼木を用います。のこぎりで70~80センチに切り出し、持ち手の20センチほどを残し皮をむきます。そしてナイフでていねいに平たく削りだすのです。だいたいこれで1日目は終了。翌日ようやくみんなでチャンバラごっこができるという算段です。

当時は月影兵庫や花山大吉、忍者部隊月光などの影響か、チャンバラがまだ遊びとして生きていました。こちらも遊び場は田んぼです。走っては立ち止まり口上を述べ、木刀を合わせるというスタイルでした。

その後、木枯し紋次郎で田んぼを舞台に転げ走る斬新なチャンバラシーンが登場しますが、まさにあれは僕たちが身をもって知っていたリアルなチャンバラでした。

昭和半ばの子どもたちは1本の折りたたみナイフからさまざまな世界を作り出していました。

ナイフは学校そばの文具店でたしか100円程度で売っていたものです。いまもあるのかネットで調べると、似たような形状のものがありました。竹細工・工作用のナイフとのことです。

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用途は合っています。しかしこんなに立派なものではなかったような気がします。アーミーナイフのように折りたたみ式のノコギリも付属していた記憶があります。

その後、最も熱中した竹やりは誰かがケガを負い失明したとかで学校で禁止になりました。

ナイフは錆び、いつのまにか僕の世界からなくなっていました。

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