昭和

フルサト

いちじくの思い出

2019/9/28    , ,

実家には蔵がある。その裏手はかつて2mほど下る土手で、広い田んぼにつながっていた。屋敷の北側に位置するそこは春にはレンゲ草が咲き、秋にはいちじくが実る、季節の大きな節目を知らせてくれる場所であった。   ぺてさんによる写真ACからの写真 いちじくの木は4本ほどあったろうか。いずれも背丈は3mあまり。風が吹くと硬く大きい葉がぶつかりあい、バラバラバラと愉快な音を立てた。蔵の陰になっている土手は夏でもひんやりし、よく枝にまたがりマンガ雑誌を読んだ。 毎年秋になると空気が甘く感じられたのは庭の金木犀の蕾だけでなくいちじくの実りの報せもあったろう。たわわに実った青いいちじくは秋の到来とともに赤紫へと変化していった。 完熟するまで待 ...

オカシミ

EVERYTIME SOMETIME

2019/9/1    

20歳代前半まで煙草を吸っていました。1日1箱もいかなかったので中毒性は軽いものです。ただ煙をくゆらせていれば間を持て余さずに済むので、酒が入るとつぎつぎ抜いてしまうのが常でした。 お酒はわざわざタンブラーグラスで、と注文をつけたジントニック。店によってはカクテルグラスで出されてしまうからです。 煙草の銘柄はJTのSomeTime。メンソール煙草でインポテンツになるという都市伝説がありましたが、へそ曲がりの僕はあえてそればかり吸っていました。 人差し指と中指、そして親指の3本でつまみ、火先を掌の内側で自分に向け、顔をしかめて吸うスタイルはリー・ヴァン・クリーフか、スティーブ・マックイーンを真似たもの。実際にそうだったかは定かではあり ...

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ココロノ

38年前、僕はこのシートの使い方から広告の仕事を学んだ

2019/6/26    

本棚を整理していたら奥から級数表が出てきました。といっても一部の業界、それも相当昔の事情を知る方でなければピンとこないでしょう。     これは印刷物の文字に用いる写植の大きさを計測するシートです。単位の級(Q)から級数表と名づけられています。 1級(Q)と1歯(H)はともに0.25mmであり、シートの行を、文字の列に縦に当てることで字送りも計測できました。 なぜ僕がこの級数表を使っていたのかというと、それは広告の仕上がり見本を作成し、そこから入稿原稿を指定するためでした。広告のデザイン案をクライアントにプレゼンテーションするには最終形をイメージできるカンプを作成しなければなりません。一流のデザイン会社はほぼ実際 ...

フルサト

青いブーメラン

2019/3/9    , ,

  竜宮城をみつけた日から数年後、僕は小学6年生となったが、工業用地として埋め立てられた干潟はまだ出来そこないの陸地だった。 工法はわからない。たぶん沖合の浚渫(しゅんせつ)した砂を用いたのだろう。新しく生み出された陸地にはおびただしい数のツノガイが白い躯となり転がっていた。平たく丸いタコノマクラも捨てられたクッキーのように散乱していた。子どもでも、それが自然破壊の姿であることがみてとれた。 陸地の向こうに海はあるはずなのだが、1km以上向こうに遠のいてしまい見えない。目の前にはひび割れた半泥地が広がるだけだった。 日曜日に行くとラジコン飛行機が軽快なエンジンを響かせ飛んでいた。なるほど遮るもののないこの場所は趣味のフライ ...

フルサト

ヤマカガシ様となったガキ大将

2019/2/14    ,

  ヘビが苦手です。あの手も脚もないヌメっとした棒がくねくねと前へ進む異様な姿に怖気を覚えます。しかしドジョウやウナギはぜんぜん平気なので、やはり子どものころの教えがその後のヘビ嫌いを育てたのだと思います。 故郷の村は、中央を流れる小川によって二つにわけられ、南向きの斜面には、小規模な棚田が広がっていました。水田にはカエルがたくさんいて、それを狙うヘビも生息していました。 自転車を走らせれば藪から突然道を横断しはじめ、ブレーキをかける間もなく踏み抜く(ヘビはぜんぜん平気)。友だちの家に遊びに行こうと田んぼのあぜを近道すれば、段差の上にかけた手で日向ぼっこの太い腹をつかむ(そのままダッシュで掛け去る)。一歩家の外に出れば、い ...

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