昭和

フルサト

20年物の養命酒

19年前、父が亡くなってから、普段使う必要な場所でない限り母は片づけをしませんでした。その一つが洗面台であり、こちらのポストのとおりです。 今回は別の場所についてお話しします。 そこは冷蔵庫と壁に挟まれた台所のコーナーで、汚れたままサビ付いた中華鍋や父が通販で買い求め一度使ったきり箱に戻されサビ付いた蒸し器や各種調理器、一斗缶に詰められた消費期限をはるかに過ぎた海苔や大豆、大切にし過ぎて食べられなくなったお歳暮のカニ缶などが80cmくらいの高さに積まれていました。 母は台所の手軽な棚として、そこにフライパンや大きな鍋を置いていました。 お盆に僕といっしょに実家を訪れていたつれあいは「恐くて手が出せなかった」と言います。たしかに冷蔵庫 ...

カゾクト ココロノ

キルタンサスって画像検索してみて

2020/1/8    , ,

LINEの途中でつれあいがこんなトークを送ってきました。 「話は変わりますがキルタンサスって花、懐かしいので暇な時に画像検索してみて」 さっきまでやりとりしていたので忙しいわけがありません。僕はGoogleで「キルタンサス」と入力してみました。   キルタンサスの花:輝ぼうさんによる写真ACからの写真   小さなラッパのようなピンクの花です。たしかにどこか馴染みのある植物。しかし、いつ、どこでこの花を知ったのか、記憶に留まるほどじっと眺めていたのか、具体的な情報をたぐることができません。 そんな返信をすると、飽きれたと言わんばかりの新たなトーク。 「あらまー忘れ切ってるな! ○○の頃、●●おばあさんからもらって育 ...

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カゾクト

注文できなかったクリスマス・イブのボルシチ

2019/12/24    

僕が24歳で、つれあいが22歳のクリスマス・イブ。銀座で待ち合わせ、食事デートをした。 出会って3ヵ月で同棲した、その5ヵ月後のことだ。 バブル景気がまさに始まろうとする恋人たちの聖夜に、僕はどこにも予約を取っていなかった。風来が好みといえば聞こえはいいが、有り体に申し上げれば怠け者。段取りが面倒くさいだけだった。そうした本性を知る最初の事件だったのかもしれない。 北風の吹きすさぶ街を、何件も店を訪ね歩き、二つの席にようやくありつく。ほうほうの体で着席し、手をすり、両手で頬を温め、急いでメニューを広げると1品ほぼ3000円以上のものばかり。「ボルシチ?いいじゃない!」などとさっきまで軽口をたたいていた僕は青ざめる。 後に知るのだがそ ...

フルサト

いちじくの思い出

2019/9/28    , ,

実家には蔵がある。その裏手はかつて2mほど下る土手で、広い田んぼにつながっていた。屋敷の北側に位置するそこは春にはレンゲ草が咲き、秋にはいちじくが実る、季節の大きな節目を知らせてくれる場所であった。   ぺてさんによる写真ACからの写真 いちじくの木は4本ほどあったろうか。いずれも背丈は3mあまり。風が吹くと硬く大きい葉がぶつかりあい、バラバラバラと愉快な音を立てた。蔵の陰になっている土手は夏でもひんやりし、よく枝にまたがりマンガ雑誌を読んだ。 毎年秋になると空気が甘く感じられたのは庭の金木犀の蕾だけでなくいちじくの実りの報せもあったろう。たわわに実った青いいちじくは秋の到来とともに赤紫へと変化していった。 完熟するまで待 ...

オカシミ

EVERYTIME SOMETIME

2019/9/1    

20歳代前半まで煙草を吸っていました。1日1箱もいかなかったので中毒性は軽いものです。ただ煙をくゆらせていれば間を持て余さずに済むので、酒が入るとつぎつぎ抜いてしまうのが常でした。 お酒はわざわざタンブラーグラスで、と注文をつけたジントニック。店によってはカクテルグラスで出されてしまうからです。 煙草の銘柄はJTのSomeTime。メンソール煙草でインポテンツになるという都市伝説がありましたが、へそ曲がりの僕はあえてそればかり吸っていました。 人差し指と中指、そして親指の3本でつまみ、火先を掌の内側で自分に向け、顔をしかめて吸うスタイルはリー・ヴァン・クリーフか、スティーブ・マックイーンを真似たもの。実際にそうだったかは定かではあり ...

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