mysorayori

カゾクト

夫の顔を忘れた母

2020/2/27    

母が、父の顔を忘れたと言う。 「これといった特徴がない平凡な顔立ちだった」と笑う。 「だからときどき遺影を見るようにしている」のだそうだ。 古い家だから天井が高い。長押から上も相当の高さがあり、仏壇の側には昔から大きな遺影が飾られている。祖父、祖母の隣りに父が鎮座ましましており、三人そろって微かな笑みを広い座敷に投げかけている 父が亡くなって19年経つ、記憶力の低下と母に指摘するのは酷だろう。しかし続けて妙なことを話し出した。 僕の妹が遺影を見上げ「中の写真だけ取り出したら、けっこう男前に見られるんじゃない?」と言ったそうなのだ。「あたしは、ぜんぜんそうは思わない」と僕に否定してみせる。 妹が父をイケメンと見なしていたとは初耳だった ...

フルサト

妹の味

2020/2/3    

妹が遅番の出勤途中に寄り、夕べのおかずをおすそわけしてくれました。 鶏の唐揚げ。大根とがんもどきのほの甘い煮物。 とくに唐揚げは料理するのがとてもじゃないけど面倒で、でも前回東京の家に帰宅した際はつれあいに次回はぜひ作ってくれろと願うほど大好きで、そろそろスーパーで買い求めようかと思案していたところだったので、まさにグッドタイミング。お昼にちょうどよく、ありがたくちょうだいしました。 あちらも子供たちは独立し、いまや旦那と二人暮らし。手抜きをすればできるものを、さすが手慣れた主婦にはたやすい手間なのか、あるいはわざわざうちの分も考えての手間なのか、とにかく手の込んだおかずを作ってくれるのはありがたいことです。 僕は高校を卒業して以来 ...

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オカシミ

爺、村の新年会で秘密を抱え込む

2020/1/27    

昨日は村の班の新年会でした。10戸からご夫婦(親子)で参加するのが原則ですが、うちのように容易ならぬ家庭は単身での参加も認められています。 飲食店の一室を借り切った、送迎バス付の昼間の宴会。会費は料理代金として一人5000円。当年度の班長と翌年度の班長が折半で乾杯用のビール10本を自腹提供するのが決まりでした。ただ近所に飲み放題のお店がオープンしてからはそちらに鞍替えし自腹の決まりもなくなりました。会費からの持ち出しを気にせず各自自由に飲み物が注文できるようにもなりました。 10戸のうち呑み助が2人。僕ともう一人、体格の良い50代の若旦那です。席は当然近くに。「隣をハズした」とならないためのみんなの誠意と防衛です。 当日は雨模様で冷 ...

フルサト

20年物の養命酒

19年前、父が亡くなってから、普段使う必要な場所でない限り母は片づけをしませんでした。その一つが洗面台であり、こちらのポストのとおりです。 今回は別の場所についてお話しします。 そこは冷蔵庫と壁に挟まれた台所のコーナーで、汚れたままサビ付いた中華鍋や父が通販で買い求め一度使ったきり箱に戻されサビ付いた蒸し器や各種調理器、一斗缶に詰められた消費期限をはるかに過ぎた海苔や大豆、大切にし過ぎて食べられなくなったお歳暮のカニ缶などが80cmくらいの高さに積まれていました。 母は台所の手軽な棚として、そこにフライパンや大きな鍋を置いていました。 お盆に僕といっしょに実家を訪れていたつれあいは「恐くて手が出せなかった」と言います。たしかに冷蔵庫 ...

フルサト

母の菜園から

    実家の庭先に20坪ほどの家庭菜園がある。 亡くなった父が撮影した25年前の写真を見ると菊が咲き誇っていた。 さらに十数年遡ると、そこで祖父が倒れた。脳梗塞を起こし、立ち上がろうとしたのか菊の根元を握っていたという。 僕が子どもの頃、そこを含む一帯は広い田で畝にはユスラウメの木が並んでいた。なんでも食べ過ぎる僕はその実で疫痢に掛かったことがある。 土地に歴史あり。長く生きると何にでも愛着が沸く。 その土地が菜園になったのは母が実家でひとりとなってからである。珍しい野菜が好きで、横の路を通る友人から「それは何?」と尋ねられるのを喜びとしていた。 つれあいが先日八百屋さんでフラクタルがおもしろいカリフラワー「ロ ...

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