子どものころ

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20年物の養命酒

19年前、父が亡くなってから、普段使う必要な場所でない限り母は片づけをしませんでした。その一つが洗面台であり、こちらのポストのとおりです。 今回は別の場所についてお話しします。 そこは冷蔵庫と壁に挟まれた台所のコーナーで、汚れたままサビ付いた中華鍋や父が通販で買い求め一度使ったきり箱に戻されサビ付いた蒸し器や各種調理器、一斗缶に詰められた消費期限をはるかに過ぎた海苔や大豆、大切にし過ぎて食べられなくなったお歳暮のカニ缶などが80cmくらいの高さに積まれていました。 母は台所の手軽な棚として、そこにフライパンや大きな鍋を置いていました。 お盆に僕といっしょに実家を訪れていたつれあいは「恐くて手が出せなかった」と言います。たしかに冷蔵庫 ...

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母の菜園から

    実家の庭先に20坪ほどの家庭菜園がある。 亡くなった父が撮影した25年前の写真を見ると菊が咲き誇っていた。 さらに十数年遡ると、そこで祖父が倒れた。脳梗塞を起こし、立ち上がろうとしたのか菊の根元を握っていたという。 僕が子どもの頃、そこを含む一帯は広い田で畝にはウスラウメの木が並んでいた。なんでも食べ過ぎる僕はその実で疫痢に掛かったことがある。 土地に歴史あり。長く生きると何にでも愛着が沸く。 その土地が菜園になったのは母が実家でひとりとなってからである。珍しい野菜が好きで、横の路を通る友人から「それは何?」と尋ねられるのを喜びとしていた。 つれあいが先日八百屋さんでフラクタルがおもしろいカリフラワー「ロ ...

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遊び道具をナイフで工作した昭和半ばの子どもたち

2019/12/27    

僕が小学生だったある数年の冬、小さな折りたたみナイフが大流行したことがありました。 それで竹やりや竹鉄砲、木刀などを作るのです。 たとえば竹やりは川のそばに自生している細く真直ぐ伸びた女竹を使います。 のこぎりで長さ1メートルほどに切り、片方をナイフで斜めに尖らせます。そしてもう片方には尻から縦に5センチほど割れ目を付けます。 細長いアオキの葉を採り、先端にナイフでジェット戦闘機の尾翼のような矢形の切り込みを入れます。これをさきほどの竹の割れ目に差し、最後に“尾翼”が抜け落ちないように尻を糸で縛り完成です アオキはこの地方では冬に鮮やかな赤い実をつける低木の常緑樹でよく庭木として植えられています。鳥が実を食べフンを落とすのか、辺りの ...

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この道はいつか氷を踏んだ道

2019/10/30    

実家の前に小道があり、その向こうにうちの休耕田があります。 今日は今年最後の草刈りでした。秋に刈っておけば春までそのままにしておける。ほっと一息つくための希望の労働です。 土手を刈り、道に落ちた刈草をほうきでかき集める。その小道は今は側溝が掘られた立派なアスファルトとなっていますが、僕が子どものころは、土がむきだしのデコボコ道でした。 そこに雨水が溜まると冬には氷が張りました。小学校への登校時、家の敷地の出口をほんの数メートル出たばかりのところで、僕はこれからの通学路の退屈を紛らわそうと、靴のかかとで白い氷の面を押し割りました。気圧の変化によるのか、地面への水の浸透のせいなのか、くぼみにできた氷にはよく白い面ができ、格好の遊び相手に ...

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いちじくの思い出

2019/9/28    , ,

実家には蔵がある。その裏手はかつて2mほど下る土手で、広い田んぼにつながっていた。屋敷の北側に位置するそこは春にはレンゲ草が咲き、秋にはいちじくが実る、季節の大きな節目を知らせてくれる場所であった。   ぺてさんによる写真ACからの写真 いちじくの木は4本ほどあったろうか。いずれも背丈は3mあまり。風が吹くと硬く大きい葉がぶつかりあい、バラバラバラと愉快な音を立てた。蔵の陰になっている土手は夏でもひんやりし、よく枝にまたがりマンガ雑誌を読んだ。 毎年秋になると空気が甘く感じられたのは庭の金木犀の蕾だけでなくいちじくの実りの報せもあったろう。たわわに実った青いいちじくは秋の到来とともに赤紫へと変化していった。 完熟するまで待 ...

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