実家の納屋を片付けていたら未開封の焼酎を発見しました。
八丈興発の麦焼酎「情け嶋 25度 700ml」と芋焼酎「鬼ごろし 25度 700ml」。
酒好きの父のこと。大切にしまっておいたものの、体を壊し、そのままになってしまったのでしょう。
発見した場所は昔牛小屋だったあばら家のコンクリートの床の上。よれた段ボールの中にありました。少なくとも18年以上は寒暖の激しいその場所に放置されていたはずです。
果たして飲めるものなのか、恐る恐るキャップをひねり、瓶口に鼻を近づけると、異臭はありません。考えれば蒸留酒ですから。未開封であれば腐るはずもない。埃まみれの瓶を洗い、記念に写真を撮りました。
父は酒好きで知られていました。以前お話ししましたが、友人と旅行に行き、夜のご馳走に一切手を付けず日本酒ばかり飲んでいました。おかげで宿の主人が何か不手際でもと幹事にお伺いを立てる騒ぎになったそうです。
母に言わせれば「酒で寿命を縮めたひと」。夜になるとうそうそと外出し朝帰り、少しばかり仮眠をとって会社に行っていたそうです。
事実、晩年の写真を見ると顔は黒く、やせ衰えています。ちょうど今の自分と同じ60歳であるのに、すっかり老けこみ80代の老人のようでした。最期は肝臓がんでしたが、この頃からすでに病んでいたのかもしれません。
そんな親父のおかげで親類筋や集落の法事の席では酒が容赦なく注がれます。有り難くいただくうちに一人前の酒飲みになりました。
もしかしたら実家に帰ってきた僕への父からのギフトかもしれません。普段は甲類4リットルの安酒で済ませていますが、その夜は香り、味わい豊かな八丈島の酒(「さ」の神様の気配 )をいただきました。
最近、父を想うことが多くなりました。期待を裏切るばかりの人生に、仕方ないと自分を赦しながらも、後ろめたさの残る夜でした。