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気管支炎を患う僕と、誤えん性肺炎の話がしたいお向かいさん

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鼻垂れの孫娘が帰った翌々日、のどの痛みとともに38度の熱を発し寝込みました。その後の養生が不十分だったのか、カラ咳が残り、今度は寝られません。のどの奥の方に移った炎症がさわり、タンを切ろうと咳き込んでも思うようにいかないのです。

最初は一般的な風邪薬でごまかしていましたが、いっこうに快復しません。むしろ服用すると気のせいか眠くてしかたない。見かねたつれあいが、漢方薬を購入してきてくれました。おかげで咳もだいぶ鎮まり、久しぶりに外出。その帰り路、お向かいのご主人に声を掛けられます。

「だいぶ咳き込んでらっしゃいましたが…」

80歳代後半だというのにまことにお元気なご夫婦で日中の出入りが絶えません。僕がリビングで苦しんでいたのを通りで耳にしたのでしょう。わざわざ自転車から降り、たずねてきます。

心の穏やかなよい人なので、事情を有体に申し述べました。

こちらは手ぶらなのにお年寄りに自転車を引かせるのは申し訳なく、話の切れのよいところで、片手を下から前に差し出し、どうぞお先に、と促しますが離れる気配はなく並んで歩いています。

無言でいるのも気持ち悪いので「いや、気管支炎から肺炎になるのが恐くて」と話を継いだところで、なぜかご主人にスイッチが入ってしまいました。

「お宅には関係のない話かもしれませんが」と切り出したあと誤えん性肺炎の予防法について講釈が始まったのです。まさかの「肺炎」つながりでの炸裂でした。

話によると誤えん性肺炎を防ぐには食道と気道の境目にある弁の筋肉を鍛えるのが大事とのこと。これまで有効な方法はなく、それを開発したとする著名な外科医から、その鍛錬法をぜひ広めてほしいと依頼されているのだそうです。

その方法は片手で額を抑え、片手でのどぼとけを押し上げるというものでした。のどぼとけのほうの手はちょうど「ワレワレハウチュウジンダ」をやるときのかたちに似ています。実際にやってみると、それなりの力を要し、喉が押し上げられるので苦しい、そして気持ちわるい。

押していた自転車から両手を離し、手振りで教えてくれるお向かいさんと、それを真剣にマネする僕。妙なポーズで立ち止まり、苦しそうな顔をした二人の老人の姿は、それは見ものであったに違いありません。

歩いては止まり、歩いては止まりを繰り返しようやく家の前までたどりつきました。本来なら「もうええわ」と突っ込むところでしょうが、僕は「大変良いことを教えていただきました」とていねいに別れを告げました。

 

 

 

 

 

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