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話を捨てに行く

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母の妹の友人に、ご主人と理容業を営む方がいます。実家が理容業だったため、若い頃から資格を取り、手伝っていました。そのうち理容業の男性との縁談が持ち込まれ、彼女は彼のお店へと移りました。もう数十年、その仕事を続けているベテランです。

母の妹はその女性に誘われ、半年に一度ほどのペースで東京に遊びに行くそうです。家からターミナル駅まで車で30分。さらに東京まで電車で2時間半。ちょっとそこまで、の距離ではありません。でも、どこを見物する、何を買う、といった目的があるわけでもない。ただ電車に揺られ、思いついたところで降り、お昼を食べて帰ってくるのです。

いったい何のために、そんなことをするのでしょう。その女性はあるとき母の妹にこう語ったそうです。

「心に積もった話を、ときどき捨てに行かないといけない」

田舎の理容店とはいえ、お客様にはいろいろな方がいらっしゃいます。髪を切り整える間、それぞれが、それなりの出来事や思いを語っていく。それが彼女の心に積もり、苦しめる。さまざまな声が飛び交い、うるさくてしかたないと漏らしたそうです。他人の手垢で汚れてしまった心を洗い清めるために、普段とは異なる世界に身を置く必要があったのですね。

気晴らし、とよくいわれますが、具体的な効能がよくわかるエピソードでした。

 

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