子供部屋の2段ベッドでこの絵本を読み、首尾よくご機嫌にさせることができると、二人の兄妹はおおよろこびでそれぞれの“うぎやまおどり”を披露してくれました。
第2回はスズキコージ/作の「やまのディスコ」架空社です。
どうですか、このファンキーで破天荒な絵。線は奔放にうねり、色は過剰なまでに塗りたくられ、書き込みの密度が半端じゃない。目に飛び込んでくる情報量が膨大で、そのアクの強さはいわゆるかわいい絵本の対極にそびえたっています。
物語は山に新しくオープンしたディスコに動物たちがこぞって訪れ、ひと騒動持ち上がるというもの。そこで主人公の「みねこさん」は謎の“うぎやまおどり”を踊ります。物語ではその踊りがどんなものであるか一切説明がありません。そこで子どもたちにその踊りをリクエストすると、想像力をせいいっぱい働かせてオリジナルのダンスを編み出してくれるというわけです。よくできた絵本で、読者に働きかけるスイッチがちゃんと用意されている。物語の最後のオチも、人間のズルさを教えていて秀逸です。
僕が若いとき故郷にディスコというものはまだなく、客のはけた深夜の小さなスナックでテーブルとイスを端によけ、有線にリクエストしたアラベスクで踊るというのがせいぜいでした。センパイが新宿辺りから仕入れてきたというダンシングスタイルはトラボルタとは程遠く、僕らは見よう見真似ながらもオリジナル性を発揮し手足をバタバタさせていたのでありました。
振り返ればあれが僕の“うぎやまおどり”。その後も仕事のさまざまな場面で“うぎやまおどり”を踊らざる得ないことがありました。きっといま僕の子供たちもそれぞれの“うぎやまおどり”で頑張ってくれていると思うと、とてもありがたい絵本であったなあと、心で手を合わせるのであります。
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