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オカシミ

「ハムうす切り」事件

夕方の混雑にはまだ早い、どことなく気だるげな平日午後のスーパー。俺はお肉屋さんのショーケースの前に立っていた。

つれあいから渡されたお買い物メモに書かれているのは「ハムうす切り」。ざっと見渡すと、薄目に切られたトレイはいくつかあるが「ハムうす切り」と明記されたプレートはどこにもない。

しかも「全部うす切りじゃん」と思っていたなかに「厚切り」と書かれたものまで飛び込んでくる。

仕方なくショーケースの向こうに立つ販売員のおねえさんに聞く。

「すみません。ハムうす切りって何ですか?」

ほんとうは「どれですか?」と聞くべきだった。しかし俺ときたら「何ですか?」の名言! いや、おねえさんも噴き出さずにはいられなかったに違いない。

それでもさすがのプロショッパー! 軽く受け流したところで、華麗なドリブルで切り込んできた。

「いまお買い求めになったショルダーハム切り落としもそうですし、こちらのロースハムもそうですし……」

みなまで聞かないうちにガガガガガーンとでっかい星付きの衝撃が走る。陰影深めなモノローグが脳内で始まる。

「そうだった。家を出るとき『ハムうす切り』はいつも買う『ショルダーハム切り落とし』のことだよ、とつれあいに念を押されたんだった。それを最初に注文して、包んでもらって、さらに『ベーコンうす切り』を追加したところで、おねえさんに『ほかに何か?』と尋ねられたもんだから、あわててメモを確認したら『ハムうす切り』ってあって、すっかりテンパっちまった俺は、あらためてそれを真剣に探し出したんだった」

白昼夢から我に返った俺は何事もなかったかのように答えた。

「あ、やっぱりそれだけでいいです」

おねえさんは満面のスマイルで二つの包みを渡してくれた。

 

 

 

 

 

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