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丁寧に生きる人

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まとまった休耕地を近隣の住宅団地の方々に家庭菜園としてお貸ししています。

団地ができた当初に祖父が始めました。賃貸料はいただいておりません。賃借権の発生などいろいろ面倒なことが起こるのを避けるためすべて無償です。放ったまま荒れ地となり草刈りを心配するより、畑として生かしてもらえばこちらも助かるし、うれしいからというのもあります。

ただ、もう40年以上続くことなので、自分の家を建て引っ越してきた戸主さんたちも高齢となりました。当初20軒近くあった借り主さんは今は半分以下。そのうちの3~4件の方々が毎年律儀にお中元やお歳暮を畑のお礼にとお持ちくださいます。

そのなかのお一人で、私の代になってから家庭菜園を始められた比較的若いご夫人から今朝携帯に電話をいただきました。

今年は入院してしまったのでお歳暮を届けられない、とおっしゃいます。

この方は例年、お中元には故郷の海苔、お歳暮にはクリスマス直前に焼きたての骨付きローストチキンを直接お持ちくださっていました。心のこもった季節のご挨拶は、いつも快活で親しみやすいお人柄をよく表わし、私自身特別に親しい気持ちを抱いていました。

そんな方からの突然の連絡です。しかもお歳暮がないことのお詫びなんて、どこまで情に厚い方なのでしょう。一方、私はといえば初めてのことで何とお返ししてよいのやら少々戸惑っていました。この年の瀬にご病気になられるとはお気の毒で病名など詳しくお聞きするのははばかられます。そのため「わざわざご丁寧にどうも」「くれぐれもお大事になさってください」など門切り型のご挨拶しかできなかったことが電話を切ったあと数時間経った今も悔やまれます。

季節のご挨拶などお気持ちだけでけっこう、とよく言いますが、今年はかつて経験したことのないほど温かいお気持ちをいただきました。こうしたお付き合いのできる方が自分にはいる。そんなうれしい気付きをこの方はくださいました。

「よいお年を」なんてご病気の方にふさわしくないかもしれません。でもその思いを本当にこころからお返しする今年です。

  

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