家族4人でグアムへ旅行したときのことです。バーベキューにげんなりしていた僕たちは中華料理でディナーをキメることにしました。4人のうちふたりは小学生です。なのにあれもこれもと注文してしまい、さらにビッグなグアムサイズで完全に胃袋オーバー。半分近くのメニューをホテルに持ち帰るハメに陥りました。そこでわが家の兄妹が覚えた言葉が「シアワセジゴク」。その後しばらくは、外食のたびに「幸せ地獄はもうかんべんして」と懇願されることになります。
さて、第3回はそんな家族の想い出がほろ苦くよみがえる絵本。レイモンド・ブリッグズ/作「サンタのたのしいなつやすみ」篠崎書林です。
「レイモンド・ブリッグズ」にピンときた方は多いはず。そう「スノーマン」の作者ですよね。もちろんこの絵本の前作「さむがりやのサンタ」も名作として知られています。
でも、僕はこの「サンタのたのしいなつやすみ」が一番好きです。こちらには大人のかわいい本音がつまっていてクスっとくるシーンがあちこちに散りばめられているからなんです。
サンタのお仕事はクリスマスのプレゼント配り。じゃあ、オフシーズンは何をしているの?という疑問に答えるのがこの絵本です。
ある年、サンタは旅行を思い立ちます。お目当てはグルメとお日様さんさんのフランス滞在。綿密に準備をして出掛けますが、期待ハズレの連続です。僕にもありがちなんですが、思い込みが強すぎて思い通りにいかない現実にいら立ってしまう。そんなサンタのちっちゃいおじいちゃんぶりが、とってもいいんです。
たとえばディナーに入ったレストランでは、チーズ、バター、クリームを食べ過ぎて、悪夢にうなされる始末です。
それからスコットランド、ラスベガスへと場所を変えるサンタですが、どこでも失敗ばかり。意外にも旅行慣れしていないところがペーソスにあふれていて、すこぶるよろしい。
物語のラストは住み慣れた家への帰還。読者には思わずホッとするシーンが待ちうけています。ブリッグズおじいちゃんの等身大の「愛」が素晴らしい物語。おススメです。
現在は出版社と訳が変わり、タイトルも「サンタのなつやすみ」となっているようです。