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馬頭観音

実家のあるコミュニティの大事な宗教行事のひとつが今週末に迫っています。

集落中央を流れる小川を挟んだ左右の山の頂にそれぞれ神が祀られ、その祠を清めなくてはなりません。

1年に1回の行事なので昨年の台風惨禍がそのままの状態です。

昭和初期、僕の祖父たちが相撲を取るなどして一夜を過ごした三夜様の祠の前は、倒木が折り重なり立錐の余地もありません。

一方、最も高い山に鎮座する三峯様(津島様・庚申様併祀)への長い階段は山土と枯葉が厚く堆積し、足を滑らすと一気に下まで転げ落ちそうなくらい危険な状態となっています。

2月の集会では長老が「正月前に片付けておくべき」「みなさんに信仰心はないのか」と惨状を嘆きました。

そうした意味で今回は原状回復に特に力を入れる必要があり、コミュニティの長としての責務は重大と感じているところです。

さて、わが集落にはもうひとつ神様が祀られている場所があり、その清掃は長が前日までに済ませておくというのが掟となっています。その神は馬頭観音です。

以前、そらよりでご紹介しているので、ちょっと長くなりますが引用します。

実家のある海沿いの集落から平坦地を1キロほど陸側に入ったところに、その坂道はあります。小高い丘の取りつきの斜面に沿って刻まれた道は曲がりくねり、四つの折り返しを経て、ようやく丘の頂上へとたどり着きます。

江戸時代の中期、丘の山林は三重の味噌問屋によって大豆畑として開拓されました。

江戸に味噌を供給するには三重から運んでいては追いつきません。江戸で味噌を生産しようとすれば原料となる大豆も近傍からの調達が必須です。

集落には内陸で採れた米や竈の燃木を船で江戸に送る集積所がありました。この地で大豆を栽培すれば、かんたんに江戸に運べる。そんな思惑から僕の故郷に白羽の矢が立ったのでしょう。

資料は残されていませんが、おそらくその道も商人の資金によって開かれたものと思われます。おかげで頂上の奥に村人は広い畑地を開墾することができました。

さてその坂道を上りきった終点に小さな馬頭観音が祀られています。大豆畑の開墾に、そして収穫物の荷出しに馬が酷使されたに違いありません。その労をねぎらうための塚なのでしょう。

子どもの頃、正月になるとしめ飾りをその馬頭観音に供えてこい、と祖父に命じられ、怖くて嫌がった思い出があります。その名から馬の首が埋められていると本気で信じていたからでした。

別の場所に新しく街道が作られ、丘の上に続く坂道はいまはほとんど使われなくなりました。しかしそれが命を持っていた日々はたしかにあり、ひとの息吹がありました。それを思うと胸のどこかで人の営みへの愛おしさが沸き上がります。

出典:そらより「小説『漂流/吉村昭』の44年後鳥島でジョン万次郎が見たものは」

本日、その馬頭観音の清掃に行ってまいりました。

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これが馬頭観音へと通じる坂道の入り口。いまは利用する者はほとんどありません。

 

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こうした直角の曲がり角がいくつもあります。

馬頭観音の先には実家の所有する畑がありました。そこで作業する家族へお昼ご飯を届けるため、一番下の叔母と僕はよくこの坂道を登りました。

 

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昨年の台風で杉の木が道に倒れ掛かっています。ほとんど利用されていない道ですから、伐採を行政に依頼することもしません。

ここは最もうっそうとしている場所で、子どもの頃はよくヘビが横断したものです。「つちのこ」に似た短い蛇も見たことがあります。たぶんネズミを飲み込んだ直後にああした姿になるのだと思います。

 

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さて最後の曲がり角です。

 

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しかしそこからがまた長い。最後の直線の登坂。上の画像の道の最奥に見える木陰の先、左手に馬頭観音があります

 

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こちらがわが集落の馬頭観音。

 

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屋根に掛かっていた枝を切り、笹を鎌で払い、竹ぼうきで掃いた後、注連(しめ)縄を交換し、紙垂を付け、新しい幣束を柱に縛り付けました。

前回に比べ注連(しめ)縄をきつく張ってしまいましたが、まあ、これはご愛敬。東京暮らしが長く伝統行事に馴れていない者としてご勘弁いただくしかありません。

最後にポケットにあった10円玉を1枚お供えし、これからのさまざまな無事をお祈りして帰ってまいりました。

行き帰りも含め2時間近くかかった作業でしたが、心は晴れやか。一輪車を押しての道中、今年最初の蝉が鳴いていました。

 

 

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