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渋柿と甘柿と、青空とキジ

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子どものころ、柿はわざわざ収穫にいくものでした。耕運機で5分ほど走った畑の奥に数本の木があり、高く伸びた枝先には、青空を背景に黄色い実がたわわになっていました。

 

kaki

 

長い梯子をかけ、曲芸のように手を伸ばし籠いっぱいに収穫されたそれは、しかしすべて渋柿でそのままでは食べられません。

祖父は鶏のエサの入っていた70リットルサイズの大きなビニール袋に柿を入れ、焼酎を振りかけます。開口部を硬く縛り、1週間ほど冷暗所に放置しておくと、やわらかく美味しい甘柿に変化していました。

祖母は日の当たる玄関先にむしろを広げ、延々と柿の皮をむきました。そしてヘタに短く残された枝に紐をくくりつけ、両端の2個を1セットに、軒先につるします。縁起物として鯉のぼりの竿を軒先につるしてあるので、そこに端からかけていくのです。黄赤混じりにむかれた柿が百数十個ズラッと並んだ光景は、それはそれは壮観でした。こちらは数週間は要したと思います。みずみずしかった実はすっかり硬くしまった焦げ茶色の干し柿に変身しました。

大人になり気づけば庭先に5本の柿が植わっていました。親父が亡くなり、柿の木の世話にも思いが至るようになり、年に一度は脚立に乗り剪定しています。どこで耳にしたのか、もう忘れましたが、柿の木は横に伸ばすのがよいとのこと。なるほど実の収穫を考えるときわめて合理的な判断です。そこで幹の中央付近から天に伸びた枝は花芽を宿す前の冬の間に切り取ります。しかしこれも1回行うともうだいじょうぶだろうとなり忘れがち。今年は脚立に登っても届かない所にたくさんの柿が残り、カラスのごちそうとなる運命です。

それでもほんの15分ほどで日をたっぷり浴びた甘柿が40~50個採れました。種ありですが、指で押すとほのかに弾力があり、ちょうど食べごろです。柿の硬さについては人それぞれ好みがあるようで、うちの連れあいなどはあごが疲れるほど硬い柿がよいと申しますが、僕はだんぜん柔らか派。種のまわりの果肉がゼリー状になったものをベストとしています。

とにかく自家産の駄柿ですから、どなたにも美味しいかどうかはわかりませんが、生まれ育った土地の産物ならばうれしかろうと、半分をスーパーのビニール袋に入れ、妹におすそ分けしました。

休耕田の草刈りを終え、植木ばさみを片手に柿をもいでいると、遠くでキジがケーンと鳴きました。今年もつつがなく田舎の秋が深まっていきます。

 

 

 

 

 

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