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ココロノ

彼女は覚えてくれているだろうか

中学1年生。バレンタインデー。
クラスの女子は好きな男子の机の中にチョコを入れた。
僕の机にはYからのチョコが入っていた。
でも僕はひとつももらわなかったクラスの同級生に、
封も開けず、それをそっくりあげた。
後日、悲しんでいたと彼女の友人から責められる。
僕はホワイトデーに彼女にお詫びの手紙と
小さなぬいぐるみを贈った。

中学2年生。美術の時間。
えんぴつでポートレートを描く授業があった。
僕とYはペアとなった。
僕には上出来だったけど、
果たしてきれいに描けたかはぜんぜん自身がなかった。
でもそれでよいと当時の僕は思っていた。
だってそれが僕の目に映った彼女の真の姿だったから。
ゴメンと言ったかな。いやそれは心に留めたのかも。
でも彼女は確か「すごく、いい」と言ってくれた。

中学3年生。日曜日、彼女の家に行き、
勉強部屋でいっしょに宿題をした。
外の庭を母と姉が何度も通った。
しばらくすると家の奥から彼女の父から呼ぶ声がする。
彼女は少しいらだち父のもとへと部屋を出ていく。
父は何か深刻な病だった。

僕と彼女は別の高校に進学した。
高校1年生の文化祭。
僕は彼女の高校に行った。
帰りを待ち合わせ、地元の駅からいっしょに帰った。
たしか何度かバイクの後ろに彼女を乗せ
家まで送ったことがあったのだが、
その日、僕は押して歩いた。
バイクを挟んで彼女がそこにいる。
深まる秋の夕べ、誰もいない田舎の坂道を
高校生の男女がゆっくり、
できるだけいつまでもいっしょにいられるように
どうでもいいことを話しながら歩みを進めていた。

僕はいつキスしようかと思っていた。
でもバイクのハンドルを離すわけにはいかず、
どうしたら彼女の手をとり、彼女の肩を抱き
彼女の顔を抑え、彼女の髪を撫で
彼女と目を合わせ、彼女の唇に狙いを定め
彼女にそっと近づけるか。
どうしたらそれができるのかまったくわからなかった。
そんなことをしているうちに彼女の家の近くまで着いちゃって
僕と彼女はまたね、と別れたのだった。

なんだろう。もう45年も前のこと。

つい最近、実家の勉強部屋から彼女のラヴレターが出てきた。
20歳前から家に寄り付かず、60を過ぎたこの歳になって開いた
机の引き出しはまったくのタイムカプセルで、
読み返せば昨日のことのように蘇る文面が僕のこころを締め付けた。
繰り返される彼女の「ごめんね」の言葉。
高校の同級生からの彼女を応援する「本当に好きなんだよ」の添え書き。
僕はどんな手紙を送っていたんだろう。

彼女との最後。ふたりで映画を観た。
映画館を出て、なぜそんなことになったのか、
いまでは思い出せないけど、
僕は彼女の10m先を足早に駅へと向かって歩いていた。
彼女は泣きべそをかきながら、僕の後を追っていた。

本当に。なんだろう。もう45年も前のこと。

ボーイズ アンド ガールズ ビー アンビシャス。

 

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