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映画「ロッキー」が好きだったりするという不遜な言い訳

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今年の春からコミュニティで防犯指導員をやっている。
長の荷が下りたのはいいが、今度はなり手のない職がちょうど交代の年になり、誰かに押し付けるのも面倒なので引き受けることにした。
指導員といっても月1回30分ほど黒と白のツートンの軽バンで、屋根の上のスピーカーから「ゴミステーションをきれいにしましょう、道で会うひとには声を掛けましょう、きちんと生活しているひとの街を犯罪者は嫌がります」といったようなことを大音量で触れ回るだけである。
とはいえ万が一に備え、二人以上で行動することが義務付けられており、僕は70代半ば過ぎの先輩と“素敵なドライブ”を強いられている。
半年以上が過ぎ慣れてきたとはいえやはり会話に行き詰まることがしばしばだ。
12月の今回は「大晦日に紅白は観ますか?」と尋ねてみた。
すると「観ない」というので「何かお好きな番組でも?」と再び尋ねると「昼にテレビから録り溜めた映画を観たりしてる」と返ってきた。
「あ、映画お好きなんですね。どんなジャンルが?」
「ギャグ映画以外ならなんでも観るよ」
「僕はゾンビが嫌ですね」
「ああ、それは私もだ」
いつになく会話が弾んだので自分も映画が好きであることを打ち明け、自己紹介気分で好きな映画について語ってみた。
最近「グリーンブック」を観たこと。そのおよそのストーリーとアカデミーの作品賞を取ったけどアメリカの人種差別の構図がまた繰り返されたと一部で批判を浴びたこと。それでも本来分かり合えぬ人間同士が理解を深めていく出来事は琴線に触れとてもよい作品であったこと。久しぶりに誰かに感動を伝えることができちょっと興奮していた。
ただ一方で小難しいことを大層にという嫌いがないわけでもなかった。
その反省もあってか、僕は最後に「まあそんなこといってもじつは『ロッキー』が好きだったりしますけどね」と付け加えた。
映画の話はそこで終わった。先輩から私はこの作品が好きだという話は期待していたが出なかった。
パトロールが終わり、家に帰り、ようやく「ロッキー」でしくじったことを悟った。
「ロッキー」も優れた作品だ。「グリーンブック」と同等にひとが生きることの意味を語っている。なのに理屈を述べた言い訳に頭を使わずに観られる作品として対極に置いたのはステレオタイプであり過ぎた。それはもしかしたら先輩の趣味を揶揄していたかもしれない。何より作品に対して失礼な振る舞いであり、どの口が映画好きとほざくのかと責められても反論の余地のない戯言だった。
ごめんよ、エイドリアン。ロッキー・バルボアは今でも僕のヒーローなのに。
さて次回のパトロールは1月である。今度は何の話題を先輩に振ろうか。
「空気階段」ってご覧になりました?とかへらへら切り出しそうな自分が怖い。

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