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母との同居日記003:「ありがとう」を忘れていた

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実家で独り暮らしの母は生協で食材を買い求めていました。

しかし冷凍食品でさえ調理するのは面倒と見え、ほとんど毎日、朝はごはんと佃煮、昼はカップうどん、夜は宅配弁当でした。

僕が母と暮らそうと決意した理由のひとつがこの食事情です。気力の衰えとともに母は老け、目に見えて痩せました。

母は調理が面倒とはいえ生協への注文をやめることができませんでした。冷蔵庫に隙間ができるのが不安だったのです。好きだからと毎週同じ商品にチェックを入れ注文し、冷蔵庫は常に満杯状態でした。

「中を見て足りなくなったら注文している」と言い訳をしますが、緑内障で視野が狭いせいか見ているつもりが見ていないのです。仮にチェックしても賞味期限の表示はあまりに小さく、表示場所が商品ごとにランダムで年寄りには苦痛でしかありません。チラシから考えて選ぶということができず、病的な傾向として示されるとおり、同じパターンの行動に終始してしまいます。

妹とつれあいがたまに整理しますが、その都度野菜室はどろどろ、冷凍室の扉は閉まらない、たまごが干からびているという状態でした。

今回は本格的な同居ということで冷蔵庫の整理に容赦はありません。妹とつれあいがきっと好きなのだろうと見逃し続けてきた2013年賞味期限切れのカルピスを発掘捨てました。ブルーベリーヨーグルトは6個セットを3パック捨てました。高菜の漬物の瓶詰は6個捨てました。「コープデリ」という本来早めに調理しなくてはならない時短食材は5パック捨てました。

冷凍食品も賞味期限を1年以上過ぎたものは捨てました。悪いことに土間にも冷蔵庫があり、その冷凍室は誰もチェックしていなかったと見え、5年以上前のものが、柔らかいままありました。いつからそうだったのか、冷凍室の扉がしっかり閉まっていなかったのです。

また冷凍食品のいくつかはパックに「要冷凍」と書かれているにも関わらず冷蔵室に入っていました。たずねると「配達員が冷蔵品の袋に入れてきた」と言います。これがじつは辛い。子どものように見えすいた嘘を吐き、頑迷にその主張を譲らないのが勘にさわります。

それらの廃棄食材は20リットルのごみ袋で4袋半に及びました。

まだいけるかな、と思われ冷蔵庫に残したのは、昆布の佃煮が8パック。冷凍されたかぼちゃが4パック、チキンの竜田揚げや照り焼きなどが5パック、いわしのかば焼きが4パックなど。チキンもいわしも3~4人家族用です。

今川焼5個パックの冷凍食品があり、賞味期限を半年過ぎていたのですが、食べられるだろうと解凍してみるとカビが生えていました。冷凍室の扉が開いていた時期があったのでしょう。母に[おやつは今川焼だよ」と宣言しましたが、泣く泣く廃棄しました。

さて、同居して朝食と昼食と宅配弁当のない土日(来週からは平日も宅配弁当をやめることにしました)の夕食は僕が作っています。

スーパーで必要な食材を購入し、なるべく新鮮な野菜を加えて調理するようにしています。

冷蔵庫はそのためスカスカです(取り置きの生協食材はありますが)。たったふたりですからね。食べ切れる量しか入れないのです。

しかし母は、それが不安なのか、気に入らないのか、嫌みを吐くのです。
「明日の朝は何にするんだい。(冷蔵庫に)何もないけど」

ここでついに爆発です。

「よけいな心配しなくていいの。困らないようにしてあるから!(もちろん大声で)」

さて、老いた母と老いつつある子の同居の現実を書き連ねてまいりましたが、数時間後ハタと思い至ります。そんなに大声で威圧するほど母は悪いことをしているのだろうか?

冷蔵庫の大量の食材は不安だったからじゃないか。

同じものばかり注文するのは病だからじゃないのか。

チキンやてりやきはたまにやってくる僕のためじゃなかったのか。

食事には必ずポットにお湯を入れておいてくれるじゃないか。

お茶は朝の出がらしだけどちゃんと煎れてくれてるじゃないか。

冷たいごはんをふたり分茶わんによそいレンジの前に置いておいてくれるじゃないか。

宅配弁当のおかずを必ず1品分けてくれるじゃないか。

洗濯物は母に任せっきりじゃないか。

なのに同居するようになって母に「ありがとう」と言ったことがまだ一度もないじゃないか。

イライラの原因はもしかしたら「やってあげている」という僕の驕りにあったのかもしれません。

翌朝、NHKの連続ドラマ「スカーレット」を観ます。女中をやめさせられそうになった喜美子がみんなに聞いてくださいとお願いして披露した決意です。

先輩女中の大久保さんは倒したい「敵」。だけど草間流柔道では「相手を敬うことから始める」と教えられた。大久保さんに学び、いつか「参った」と言わせるまでがんばるので働かせてくださいと懇願します。

なんというタイミング。

「喜美子はん、あんたの言うとおりや!」

僕の前日の気づきは、このとき確信に変わりました。目の前がやっとひとつ開けました。

 

母と僕に新局面!

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(注)このポストは老境を迎えた男が実家の母の世話をするため“単身赴任”で頑張る姿をお伝えするものです。同様の境遇にある方の慰めになれば幸いです。正直、僕自身のストレス解消のためなので多少乱暴な言い回しや相手を責める言葉が飛び出しますが、怒りは滑稽の証左とお許しください。深刻の闇に惑うのではなく諧謔の灯を掲げ明るく生きるため、今日も顔晴りました。

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