お習字の世界において「特選」と「金賞」のポジションが長年あいまいなままとなっているようです。
じつは倉庫を片付けていたところ、立派な額に入れられた賞状が出てきました。
小学3年時、県の席書展で「特選」をいただいたものです。祖父母は溺愛する孫の快挙を大いに喜んだものと見え、わざわざ額装し座敷に飾ったものと思われます。
なにせ珠算検定5級の証状でさえ額装する祖父母でしたから、可愛いがりようは相当なものでした。
倉庫を片付けていたら、ガラス付きの立派な額に入れられた証状が出てきた。「珠算検定5級」。そうだった。割り算が始まった4級で挫折して、塾に行かず、月謝でお菓子を買っては時間をつぶし、行ったふりをしていた。思わず噴き出したが、どんだけお坊ちゃんだったのだろう。祖父母の愛、しみじみリー。
— sorayori (@sorayori_com) April 13, 2020
それが本当の記憶なのか、後日耳にして作られた記憶なのか定かではありませんが、まだ言葉もしゃべれない頃、祖父のあぐらの上に乗り、揺らされながら、当時の愛称「おっとちゃん」と何度も呼ばれ遊んでもらったことがあります。
また祖母は幼児のころ朝枕もとにバナナを持ってきて「目覚ましだよ」とそっと渡してくれました。
さて、僕には二つ下の妹がおります。こちらがなんとも優秀で、僕が最高評価5が五つなら、妹は七つと小中学時代の成績をつぎつぎと塗りかえていきました。
その妹が翌年の同展で「金賞」をとったのです。その賞状も同様に額装され倉庫にしまわれていました。
そこで思い出したのが、わが家で持ち上がった「『特選』と『金賞』どっちが上?」問題でした。
当時は「金賞」の勝ちでした。「特選」は入選のなかでの特に優れたもの。位置づけがあいまいです。一方、「金賞」は明らかに最高賞である。「特に選ばれた」もののなかでも「金」である、と“家族評議会”は判断を下したようです。
僕はこれがとても悔しかった。学校では優劣が明らかにされることはなく、その後数年間アンテナを張っていましたが、悔しさが薄れるにつれ忘れていきました。
当時のモヤモヤの原因が倉庫から掘り出されたのを機に、ネットで調べてみることにしました。
するとなんと現在でも同じ疑問を持つ方がいらっしゃいました。「習字 金賞と特選」でググってみてください。2017年においてもなお「Yahoo!知恵袋」に疑問が寄せられているではないですか。
おそらくお習字界では書道人口拡大のため、お子さんたちにたくさん賞をあげますよという配慮があるのではないでしょうか。どちらが上というわけではない「特選」も「金賞」もそれぞれに違う“花”(そういえば「推薦」という花もありました)、いっしょうけんめい咲いていますね、というわけです。
検索したサイトの大方の評価は「特選」が上でした。しかしお習字界のそんな気遣いに思いが至った今、もうどうでもよいこととなりました。
それより問題なのは、この賞状2枚です。処分か、保存か。妹にひな人形の脇飾りとしてたくさん発掘された豪華な童人形と併せてLINEでお伺いを立てたところ「断捨離断捨離」の簡潔な返信。
爺となった兄は、婆となった妹の潔さを改めて見上げるのでありました。