陽気に誘われ筍を掘った。
大豊作で一輪車にいっぱいの収穫。
道路から上の山の斜面に竹林があるため、掘った筍は道に止めた一輪車まで降ろさなくてはならない。
そこに4歳年下の村の旦那が通りかかる。小学生の頃は先輩風を吹かせ遊んだ仲だから声をかけないわけにはいかない。
「筍食べる?持っていきなよ」
すると彼。「帰りにいただきます」
なるほどご夫婦でダイエット・ウォーキングによく出かけているので、今日もそれかと。
「帰りにはもうここにいないかも知れないんで家に声かけて」
すると二十数分後彼が戻って来る、小学生の娘さんを連れて。
ああ、下校のお迎えね、と納得し、彼に声をかける。
「美味しそうなの二~三本持っていきなよ」
彼は遠慮なく「ありがとうございます」と筍を選び去る。
「どーもう」「はいよー」
気心の知れた仲の挨拶を交わす。
さて翌日の午後、彼のお母さんがわが家を訪ねる。
「昨日は結構なものをいただいて、これはうちで採れたもんだけど」と
庭先で垣根の下の草取りをしていたわが母にらっきょうと小松菜の採れたてを手渡す。
「〇〇さんによろしくね」
もちろん僕の名前で、聞こえたすぐそのさまあいさつにその場に飛び出そうかと思ったけど、まあ、それもいかがなものかとやめる。
何気ない心遣いと、返礼の心遣い。田舎はそういうもので人付き合いが成り立っている。