駒沢公園でビール片手に野球観戦した日々

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僕らの結婚記念日は新居に冷蔵庫が届いた日だ。彼女に、まだ引っ越しの済んでいないアパートで受け取ってもらい配達員に設置してもらう。その日からいっしょに暮らせるようになるからだ。同居のスタートが確定していたということで結婚指輪にその日付を刻印した。父に依頼し僕の住民票のあった実家の市役所に婚姻届けを提出してもらったが、いつになるかわからなかったので、指輪を買ったお店でとりあえず確かな日を刻印してもらうことにした。
場所は地下鉄新玉線、いや今は田園都市線か、その駒澤大学駅だった。駒沢公園のすぐ近くでナイスチョイスだったが、アパート自体は入口のドアの取っ手がかんたんに取れてしまうほど古いものだった。
僕はまだ25歳のくせに何を思い上がったか結婚と同時にフリーランスのコピーライターとして独立し、彼女はフリーランスのイラストレーターとして働いた。
彼女の父が若いころに購入し、彼女が新居に勝手に持ち込んだ仕事机をうなぎの寝床アパートの真ん中の四畳半に置き、前後向き合う形で互いの仕事机として共有した。あまりに狭い使い方だったが、新婚だったので近くにいられるだけでうれしかった。
僕らはそれぞれの職種でビッグになるという大きな夢を抱いたが、実態は暇そのものだった。
天気の良い日を選んで、彼女がおにぎりを作り、僕らはよく駒沢公園の植え込みの芝生の上でお昼を食べた。
たまにドリフのメンバーが長さんをリーダーにジョギングをしていたりして、やっぱり都心の公園はハデだなと思ったりした。
彼女はソフトテニスの強豪高校の副キャプテンだったということで、公園のテニスコートを借りてプレイしたが、係の爺に「いままでの利用者で最もヘタクソ」と罵られた。すべては僕のせいだった。
駒沢公園は昔の東京オリンピックの公園でスポーツの大会がよく催された。
僕と彼女は暇つぶしに、よくそれらの大会を観戦した。レスリング、アメフトなど生で観たことでその面白さがわかったスポーツがあった。
でも、やっぱり僕と彼女の一番のたのしみは野球場でのアマチュアの試合だった。夕方、小さな観客席にビールを持ち込んでライトの灯されたグラウンドをなんとはなしに眺めるのが好きだった。
ヒットが出れば拍手をし、エラーが出れば知らない兄ちゃんたちをヤジった。
もし永遠というものが可能なら、僕は当時のあの野球場を選ぶかもしれない。彼女に話したことはないが、たぶん笑顔で了解してくれるだろう。
また戻りたいな。あの若く、どうでもいい日々。

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