小学生の頃、僕と2歳下の妹の二人で座敷で「電気あんま」を掛け合って遊んでいたことがある。
「電気あんま」をご存知ない方のためにちょっと説明しておくと、それは体を仰向けにしたまま両足首を握り、相手の股間に足裏を押し当て、断続的に刺激を与えるものである。やられた方は決して痛くなく、むしろくすぐられているような感覚で、それが強い刺激となって思わず笑い声が出てしまう。
当時、学校の廊下は給食で余った牛乳を水代わりに使い雑巾で拭いていた。そのピッカピカの廊下で休み時間になると僕らは四の字固めやコブラツイストなどプロレスの技を掛け合い遊んでいた。そのたのしさの頂点に「電気あんま」があった。
女子はプロレスごっこなどしていなかったので「電気あんま」をやり合っている光景は記憶ない。もちろん男子が女子に仕掛けるというのもなかった。
僕はそうした遊びの延長で妹に「こんなおもしろいのがあるんだぞ」と「電気あんま」を掛けていた。そして妹にも僕に掛けさせていた。二人とも笑いが止まらなかった。
すると座敷に面した土間を通りかかった祖母がひとことこう言い放ったのだ。「まぐわれるもんならまぐわってみろ」。
「まぐわる」という言葉の意味はわからなかったが、その声の大きさに驚いて僕らはその遊びをやめた。もう忘れてしまったがきっと後で母に意味を聞いたのだろう。僕と妹が再び「電気あんま」をすることはなかった。
もちろん大人になって妻に「電気あんま」をしたこともない。
今朝SNSで知った、校長先生による男子生徒への電気あんま事件。先生はきっと祖母に注意されたことがなかったのだろう。
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