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スライドショー フルサト

竜宮城をみつけた日

2019/2/13    , ,

  故郷の目の前は海で、広い干潟があった。それは隣村で干拓となっていた。 干拓といわれても、ぴんとこない人が多いだろう。干拓は、海に土を盛り、周囲を堤防で囲み、新たな陸地を生みだすものだ。水路を巡らせた隣村の干拓は一面の田んぼとなっていた。 干拓には実家の所有する田があった。水路は深く、道との境目をアシやガマが隠し、小さな子どもにはとても危険な場所だった。だから、たまにしか連れて行ってもらえなかったが、干拓の思い出は鮮明だ。 * あるとき叔父が青いザリガニを見つけた。父といっしょに水門まで走り、のぞくと、そいつがいた。青なんておしとやかなものではない。コバルトブルーのザリガニだった。その日は網を持っていなかったので、後日叔 ...

ココロノ スライドショー

話を捨てに行く

2019/2/8    

  母の妹の友人に、ご主人と理容業を営む方がいます。実家が理容業だったため、若い頃から資格を取り、手伝っていました。そのうち理容業の男性との縁談が持ち込まれ、彼女は彼のお店へと移りました。もう数十年、その仕事を続けているベテランです。 母の妹はその女性に誘われ、半年に一度ほどのペースで東京に遊びに行くそうです。家からターミナル駅まで車で30分。さらに東京まで電車で2時間半。ちょっとそこまで、の距離ではありません。でも、どこを見物する、何を買う、といった目的があるわけでもない。ただ電車に揺られ、思いついたところで降り、お昼を食べて帰ってくるのです。 いったい何のために、そんなことをするのでしょう。その女性はあるとき母の妹にこ ...

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カゾクト スライドショー フルサト

祖母の秘密

2019/2/6    , ,

  幼いころ、祖母は「ある場所」によく連れて行ってくれた。 バスで1時間ほど揺られた先の、終点にある、栄えた街。今はすっかり寂れてしまったが、当時は駅前に大型バス2台が入るターミナルがあり、目抜き通りを挟んで2つのデパートが覇を競っていた。 その街の一角に小さなクリーニング店があった。 駅の近くでありながら、路は狭く、ひっきりなしに車が行き交う。バスが軒先をかすめるように通り、祖母と僕はびくびくしながら端っこを歩かなければならなかった。車が巻き上げる埃で、クリーニング店の硝子戸はいつも汚れていた。しかし店に入り、戸を閉めると、路の喧騒は噓のように遠のいた。静寂と布に当てるスチームの匂いが、やっと安全な場所に着いたことを教え ...

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狸に化かされた大叔父

2019/3/1    , ,

  大叔父は、背が高く、笑顔を絶やさない男だった。10人兄弟の一番上が僕の祖母で、すぐ下の弟が大叔父だった。農業に篤い親は戦時中にお国から勲章をいただいている。それなりの家のお坊ちゃんだった。何にでも興味を示し、博識で知られていた。 僕の妹が結婚相手を決めたとき、まだ親同士が会ってもいないうちから、新郎の自宅を探し当て、カメラに収め、わざわざ写真を見せにきてくれた。少しおせっかいなところがあったが、人柄がそれを笑い話にした。 半農半漁の僕の生家では、秋に祭りがあった。いわゆる収穫祭である。近在の親類を呼び集め、御馳走を振る舞った。「祭り」が転じて「まち」と呼ばれていた。 当日は表座敷と奥座敷の仕切戸が取り払われ、客用の卓が ...

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やまつつじ

2019/2/6    , ,

  遠浅の海となだらかな丘陵に挟まれたせまい土地に、僕の産まれた村はあった。 平地が丘陵地帯の奥まで入り組み、谷状となったどん詰まりでは清水が湧き出ていた。そこは谷津(やつ)と呼ばれ、村から谷津に続く平地に田んぼが連なっていた。 初夏のよく晴れた日、僕と叔母は、谷津の田んぼで農作業をする家族にお昼ご飯を届けた。 叔母は、中学生の時に僕が生まれ、いっしょに暮らす初めての甥っ子だったせいか、実の弟のように可愛がってくれた。その日も、いっしょに歌ったり、しりとりやたわいもない話をしながら、遠い道のりを進んだ。 田んぼの脇をちょろちょろ音を立てて流れる、土がむき出しの水路では、溜まりにメダカが泳いでる。日陰の湿地にはモウセンゴケな ...

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