アエテノ

青臭いことをしてしまった

実家の村でいさかいが起きました。

発端は数年前へと遡ります。

小川に沿って走る道路のガードレールの外側。幅80cm、長さ30mほどの空き地は管理者もなく放っておくとすぐ雑草に覆われてしまいます。休耕田の草刈りを終えると、僕は余った燃料でそこを刈っていました。

ある日、村の班長が僕にお願いがあると言います。彼は五つほど年下の幼なじみで、いまも気軽に声を掛けあう仲です。

彼は「危ないので刈らないでほしい。市内一斉清掃のときに草刈り担当を決めるから」と言いました。

小川は3mほど下を流れ、ガードレールの反対側は垂直の護岸です。後ずさりしてうっかり足を踏み外そうものなら、金属の刃が高速で回転する草刈機もろとも転落しかねません。市の行事であれば万が一の事故でも保険が下りる、というのが彼の主張でした。

納得した僕は、班長の指示に従いました。

翌年の班の新年会の席で、彼はそのことを提案しました。概ねの賛成を得たわけですが、そこは宴席、お酒が入る前とはいえ、うわの空という雰囲気があったことは否めません。

そして問題が起きます。

案の定、持ち回りで毎年引き継がれる班長が草刈り担当を決めることはありませんでした。その空き地にまた雑草が伸びます。彼からお願いされた手前、僕が刈るわけにはいきません。すると村のある先輩が刈り始めました。これを見とがめた幼なじみは、ある日その先輩に食って掛かります。

「俺が班長のときに決めたことがどうして守られない」

するとその先輩は「そんなの俺は知らない。誰が刈ってもいいだろ」と返しました。よせばいいのに最後に「このバカが!」のオマケを付けて。

こうなると両者とも収まりません。

今年の新年会で「草刈り担当を決めると決めたはずだ」問題を幼なじみが蒸し返します。テーブルを挟み、彼の向かい側に座っていたかの先輩がこれに反応し「しつこい!」と卓を両手で叩き烈火のごとく怒りだしました。

この件は先輩がからだの続く限り刈るということで落着しましたが、宴席が微妙な雰囲気で覆われてしまったのは間違いありません。

さて、会がお開きとなる間際、僕は先輩のところに歩み寄り、幼なじみの彼と握手をしてこの場を収めてくれないか、とお願いしました。お怒りはごもっとも、しかしご近所付き合いの仲で遺恨を残すのはよくない、と説得したのでした。

最初は拒否した先輩でしたが、ついには「俺も大人だ」と折れ、右手を差し出してくれました。しかし、今度は幼なじみの彼が握手をしようとしません。いくら諫めても頑として首を振るばかりです。仲介は見事、不調に終わりました。

帰り道、幼なじみと二人きりとなったところで、彼を諭しました。「間違っていると思った相手と同じレベルに堕ちてどうする? 我を張らず、相手を許すこともときには大切だよ。愛を与えた瞬間、あなたの勝ちなんだよ」とそんな趣旨の話をしました。勝ち負けなんて本当はどうでもいいことですが、こだわる者に聞く耳を持たせるには工夫が必要です。

しかし説教なんてまっぴらと思っていた僕が、どう焼きが回ってしまったのか。後になり、余計なことをしたもんだと反省しきりです。ちっぽけな正義を曲げない強情はいい加減にしろと思いつつ、いい歳をしての青臭い真似も似たようなもんだなと同じ小ささに目を落とすのでした。

 

 

 

-アエテノ

Copyright© ロマグレ , 2019 All Rights Reserved.